はじめに
今回、スタッフの傷病手当の対応をすることになったので、傷病手当について改めてまとめました。
仕事をしている中で、突然の病気やケガにより長期間仕事を休まざるを得ないことがあります。そんなときに心配になるのが、「収入の確保」です。
「傷病手当金(しょうびょうてあてきん)」は、働く人の生活を守るための大切な制度ですが、患者側から見ても、医療機関側から見ても「分かりづらい」「手続きが面倒」といった声が多いのも事実です。
この記事では、実際の医療現場に関わる立場から、患者さんと医療機関、双方の視点で「傷病手当」について丁寧に解説します。
傷病手当金とは?制度の概要と基本知識
1. どんなときに受け取れる?
傷病手当金は、業務外で発生した病気やケガによって働けない期間中に、一定の収入を補償してくれる制度です。具体的には、次の条件すべてを満たすときに支給されます。
- 健康保険の被保険者であること(主に会社員や公務員など)
- 病気やケガにより就労できない状態であること(医師の証明が必要)
- 連続して3日間の待期期間を含む4日以上の休業があること
- 給与の支払いがない、または一部しか支給されていないこと
2. 支給される金額と期間
支給額は、休業前の標準報酬日額のおおよそ3分の2。支給期間は最長1年6ヶ月です。たとえば、1日あたりの平均賃金が9,000円だった場合、1日6,000円程度が支給されます。
利用する側(患者側)から見た傷病手当のポイント
1. 手続きに時間がかかる現実
「会社に休職の相談をするのも気が引けるし、申請書類もややこしそう…」という不安の声は少なくありません。
実際には、以下の3つの欄をそれぞれの立場が記入する必要があります。
- 被保険者(本人):住所、病気の内容、就労状況など
- 事業主(勤務先):出勤記録、給与支給状況など
- 医療機関:医師による労務不能の証明や診療状況
2. 「労務不能」とはどういうこと?
“働けない状態”というのは単に体調が悪いというだけではなく、実際に仕事に復帰できない程度であることを意味します。医師がその状態を適切に判断し、申請書に記載する必要があります。
3. よくある不安や疑問
- 「会社に言いづらい」→ 傷病手当の申請は労働者の権利です
- 「復職のタイミングが難しい」→ 医師の意見書が判断材料になります
医療機関側の実務と配慮点
1. 医師の記載が必要な項目
「労務不能の状態」「就業の可否」「傷病名」「初診日」など。曖昧な表現は審査遅延や不支給につながる可能性があるため、正確かつ簡潔な記載が求められます。
2. 事務担当者のサポート
- 書類の不備がないかチェック
- 患者への説明や連携(郵送対応・再提出サポートなど)
- 医師への記入依頼タイミングの調整
※患者さんへの提出が遅れる=患者さんの収入が遅れる
3. 実際によくある相談
「退職しても傷病手当はもらえるの?」「診断書と何が違う?」など、患者さんの不安に丁寧に応えることが信頼にもつながります。
よくあるケース別アドバイス
ケース①:退職後に申請できる?
退職日までに労務不能状態であれば、退職後も条件を満たせば支給される可能性があります。医師の証明があればOKです。
ケース②:診断書で代用できる?
できません。傷病手当金支給申請書は、専用の様式が必要で、診断書とは役割が異なります。
ケース③:パートやアルバイトも対象?
会社の健康保険に加入していれば対象になります。ただし、国民健康保険には傷病手当制度がありません(一部自治体で独自制度あり)。
よくある誤解と注意点
業務上のケガや病気は労災扱い → 傷病手当は対象外
傷病手当受給中アルバイト・副業は原則NG → 労務不能状態とみなされなくなる可能性あり
医師の記載が不十分だと支給が遅れる → 医療機関への相談は早めに
ケース①:退職後に申請したい
退職日までに労務不能状態であれば、退職後も条件を満たせば支給される可能性があります。医師の証明があればOKです。
ケース②:診断書で代用できる?
できません。傷病手当金支給申請書は、専用の様式が必要で、診断書とは役割が異なります。
ケース③:パートやアルバイトも対象?
会社の健康保険に加入していれば対象になります。ただし、国民健康保険には傷病手当制度がありません(一部自治体で独自制度あり)。
まとめ:制度を知っておく事が大切!
傷病手当金は、単なる手当ではなく、「働く人の生活を守るための制度」です。
申請にあたっては複数の関係者が関与するため、少し手間がかかるように感じるかもしれませんが、正しい知識と事前の準備があれば、スムーズに申請できます。
医療機関に勤める人にとっても、患者さんの生活を守るサポートができる、大切な制度だといえるでしょう。
おわりに
傷病手当金は、病気で仕事を休む人の「命綱」ともいえる制度です。
医療関係者・患者の両方にとって役立つ制度として、ぜひ活用してください。
わからないことがあれば、受診している医療機関の窓口や協会けんぽ等の社会保険の保険者に相談するのがオススメです。